健全な肉体に狂気は宿る

健全な肉体に狂気は宿る

・読み : けんぜんなにくたいはきょうきはやどる
・著者 : 内田 樹,春日 武彦
・発行 : 角川書店
・発行日 : 2005/08
・ジャンル : エッセイ
・サブタイトル : 生きづらさの正体
・定価 : 760円

自分の身に起きている事柄には、「バリ」というか「バグ」というか、そういう「まだことばにできないような何か」、「できあいのストーリーでは説明できない余剰」があるわけでしょう。むしろ、その割り切れないところにその人の個性とか、スキームを書き換えるときの足がかりになるようなヒントがあったりすると思うんですけど、「バグ」や「ノイズ」を全部切り捨てて、できあいのチープでシンプルなソリューションに飛びついてしまう。
これって、バランスを崩した人が、池の真ん中の小さな石の上にパッと飛び移ったようなもので、たしかに当面の足場はあるけれど、そこから先はもうどこにも行けないし、元へも戻れなくなっている。問題の解決を急いで安手のソリューションに飛びつくとむしろ「出口なし」ということになりそうな気がするんです。

そういう行き止まり状況を打開して、そこから脱出するための手がかりというのは、実は自分の中にしかないんです。自分の中にあるほんとうに個性的な部分、誰にも共有されない部分、誰にもまだ承認されていないような傾向、そういうものしか最終的には足場には使えないとぼくは思うんです。
その誰にも共有されないもの、自分がほかならぬこのような自分であることを決定づけるような特異点を、何とかして主題化・言語化することで、自分がこの世界に存在することの必然性みたいなもの、宿命的なものを感知できる。そのときにはじめてそういう行き止まり状態から出られると思うんです。

解決を急がないで、不決断にとどまるということは、たしかに気分が悪いことではあるんです。何だかわからないものに遭遇したときの「気分の悪さ」を解消するためには、2つしか方法がないんです。
1つは「なかったことにする」。これが安易な解決方法ですね。
もう1つは「理解するために、自分自身の知的OSをバージョンアップする」。
こちらは時間はかかるし、知的負荷もきつい。でも、ある知的なフレームワークから別のフレームワークに移行する過程においては、そのどちらも無効であるような「真空地帯」があるのは仕方が無いんです。ある秩序から次の秩序へシフトするあいだの一時的な「酸欠状態」を何とかノンブレスでしのぐ力を、僕は「知的肺活量」と呼んでいる。その知的肺活量がすごく下がっていると思うんです。



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  ――生きづらさの正体 この本は、「パンクチュアル」な内田センセーと「カジュアル茶髪」な春日先生(精神科医・現在は江東区にある墨東病院精神科部長)とのダイア... [続きを読む]

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» 「健全な肉体に狂気は宿る」 from 月灯りの舞
「健全な肉体に狂気は宿る   ―生きづらさの正体」  内田 樹:著/春日 武彦:著  角川書店/2005.8.10/760円 ? 生きづらさ... [続きを読む]

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